2020.11.08,09 精神的に向上心の有る者しかいなかったら

夏目漱石の「こころ」、『精神的に向上心の無い者は馬鹿だ』

宮本常一著作の「私の日本地図 五島列島」を読んでいる。
五島列島は今や日本の果ての一つとも見えるが、かつては対馬と同じように中国や韓国との玄関口でもあった。
行き来が自由だったり目が届きにくかったり海路がメインの時代だったら、かの地は交通量も多くて栄えていただろう。
しかし今は国境が出来て行き来がしにくくなり、その結果日本の果てとなった。

漁業が主な産業で、まあ今でも食うには困らないだろう。
だがやはり果ての感じがあって、才気あふれる若者がそこにとどまるのは「勿体ない」「精神的に向上心が無い」と都会の人間から見れば捉えかねない。
自分の力を試す場所、井の中の蛙にならないようにするには外に出ていかないといけない。

今の日本、もしくは世界が、そのような考えに囚われているようにも思う。
留まることは自分を活かさないこと。
活かさないことは勿体ないこと。
どこかの原始的な部族の中にもGAFAMの創業者くらい才気のある人間がいるかもしれない。
そのような人材には教育してやって、適材適所に配置してやって、人類全体の幸福のために尽力させてやるものだ、と。

しかしそのような考えは一極集中を招く以外他は無い。
端から中央へ人が流れていく一方だ。
かつては土地の広さが人の居住能力や居心地を決めた。
しかし今はそれほど広い土地は必要無い。
中央の人口密度は上がる一方で、地方の人口密度は下がる一方、となるのだろうか。

島に住むご老人たちは、島の風景と気心の知れた仲間と共に暮らすこの状況を、『天国』と称している。
幸福な人生、とは。
その人生を送るための場所、とは。

日記

Posted by YU