『読書感想』7つの習慣―人格主義の回復―

7つの習慣

1989年に原著が出版された、ビジネス書の中で大定番の「7つの習慣」を読了したので、その感想などを書いてみたいと思います。
自分の記憶を確立する目的でもあります。

ビジネス書なのでビジネスに役立つ本…であるのは確かなのですが、『人生哲学』や『自己啓発全般』の内容でもあります。
仕事をしている人にも、(一般的な)仕事をしていない人にも、あらゆる人が対象となる本でしょう。

他者との良好な関係を築くには、まず自己の確立から

表題のとおり、この本では習慣とすべき7つの事柄について一つ一つ説明をしています。
しかし、その7つは全て同レベル・同次元にあるわけではありません。

ビジネス書だから最終的には「ビジネス≒他者との交流の成功」が目的ですが、まずその前に、自分の確立や成功をせねば成果は出ません。

…と言っても、まあそれは本当に難しいことで、一朝一夕で出来ることではありません。
今の自分を根本レベルで変えたいからには、やはり『習慣』にするほど頻繁かつ普通に努力せねばなりませんね。

私的成功の習慣

外からの刺激で反射的に反応するだけでは、自己を確立したとは言えませんし、曖昧な自分になっていきます。
インサイドアウト(内から外へ)の力が必要です。

個人的に分かりやすかったのは、第二の習慣である「終わりを思い描くことから始める」でしょうか。
常に自分の目的が何であるか、最も大事なことは何なのかを思い描いてみることから始めてみるのです。
例えば、もし自分の葬式が来た場合、どんな人にどんな弔辞を読んでもらいたいか、自分はどんな人間であったか。
今のままの自分で、その希望を果たせるか、果たせないか。
希望を果たすには何をしていけば良いか。

第二の習慣が出来れば、第三の習慣である「最優先事項を優先する」は簡単に達成できるでしょう。
というか、第二と第三はほぼ同じでは?第三は行動のことか?

具体的な行動

最優先事項や人生で最重要なことをまとめて、この本では「原則」と呼んでいます。
法人であれば、その原則は社訓になります。
しかし原則は原則だからと言っても、全ての原則や社訓をただ押し付けるだけでは真摯に受け止められはしません。

この本に具体例として載っていましたが、社訓を決めてそれを社員に適用するには、個人の主体性や裁量性(参加)が必要です。
参加なければ決意なし。
偉そうな社長が社員に社訓を押し付けるのではなく、社長も社員も一緒の権限を持って原則を決めていかねば、効果は一切発揮しません。


人間の行動は4つに分類されます。

  • 緊急であり、重要なこと
  • 緊急ではないが、重要なこと
  • 緊急であるが、重要ではないこと
  • 緊急ではなく、重要ではないこと

自分を伸ばす、私的成功でカギとなるのは、「緊急ではないが、重要なこと」です。
この領域を伸ばして後々問題が発生するであろう事柄を予め対応しおけば、「緊急であり重要なこと」を縮小し、日々の問題に切迫されることが少なくなります。
しかし怠惰に過ごしてしまう人間は、時間が出来ても「緊急ではなく、重要ではないこと(≒享楽的な娯楽)」にリソースを費やしてしまいます。
その結果、「緊急であり重要なこと」に忙殺されます。

「緊急であるが、重要ではないこと」は、無暗にリソースを奪うものだから省略していきたいものです。
誰でも出来ることより、自分にしかできないことを優先しよう。

多くの場合、「最良」の敵は「良い」である。

この世は「win-win」と「lose-lose」のみ

第4,5,6は「公的成功」とされ、実際に他者との関係を成功に導く習慣です。個人的には、やはり私的成功同様、第4と第5の習慣を身に付ければ自ずと第6の習慣の結果が導かれるものだと思います。

この世には『勝負』というものがありますが、広い視野で見ればビジネス界には「win-win」と「lose-lose」しかありません。

どちらかが不満を持つ取引「win-lose」「lose-win」は、その時は良くても、それ以降が続きません。
結果的には両方が不満を持つ結果となる「lose-lose」になるのです。
だからお互いが「win-win」になる取引方法を見つけるために、尽力する必要があります。
それが第4の習慣「win-winを考える」です。

と言っても全ての取引を簡単にwin-winに出来るわけではありません。
妥協して「win-lose」にするよりも、「No deal(取引をしない・延期する)」という選択肢を取るのがベターでしょう。
自分と相手は違う、もしくはまだ相互理解が出来ていない。
そんな時にはすぐ決めてしまうのではなく、もう少し時間を置いて観察してみる。
そうすればwin-winとなる方法も出てくるかもしれません。

そうそう、第4の習慣の記述の中で、とある銀行での研修の具体例が載っていたのですが、アメリカのことなのにそれが非常に日本的で面白かったです。

今までは年間75万ドルと6か月間をかけて、詰め込み式でかつ目的のはっきりしない管理職研修をしていた。
企業にとっては多額の金と時間のかかる「lose」であり、研修生にとってはやりがいのない「lose」だった。

それを、研修の目標・到達点・昇給の基準をはっきり決め、手段より結果を重視させた。
その結果、研修生たちは積極的に自分から動き、研修は3週間半で終わった。
旧経営陣からは不満と不信の声があったが、旧研修よりも更に高い目標を定めて研修生にさせてみた。
すると、追加の目標を10日足らずで終わらせた。

この新しい研修は、企業にとっては金と時間を節約してより高い力を身に付けた研修生を手に入れた「win」となり、研修生にとっては手っ取り早く昇給と昇進とやりがいのある研修が出来た「win」となった。

共感性と論理性を兼ね備えて「相互理解」する

第5の習慣「まず理解に徹し、そして理解される」は、第4の習慣を目的とし第6の習慣の結果を導くための手段です。
「共感性」が必要となる習慣です。

「共感」は男性には少し苦手な領域です。というか自分が一番苦手とするものです。
しかしその共感を行わずに頭ごなしで暴力的に他人を「理解する」では、裏に潜むものを相手はさらけ出してくれません。

相手と自分では、備えているものが違います。
例えば相談する時される時、その備えたもの全てを表現しませんし出来ません。
だから「自分ならその時そうするだろう」と早合点するのではなく、まず「理解に徹する」。
理解に徹する途中、不可解な時が出るでしょう。
しかしそれでも出来る限り共感して、相手を理解しようと頑張る。
時間と手間はかかるけれど、誤解して相手を傷つけてまたやり直しになるリスクを考えれば、さしたる手間ではありません。

そして、自分が相手を理解しようとするかのように、自分も相手に理解されようと分かりやすく説明する。
それが「理解される」です。
相互理解が深まれば、今まで何となく攻撃しあっていたお互いの立ち位置が分かり、冷静な判断で「win-win」となる方法を模索していくことが出来るようになるのです。

再新再生する「習慣」

私的成功・公的成功の目的・手段・結果の6つの習慣は、7つ目の習慣である「刃を研ぐ」で更に昇華していきます。
成長に終わりはなく、らせん状に周りながら登っていくのです。
方法や結果をただ一時だけ理解するのではなく、これらを「習慣」にする必要があります。

まあ、習慣を身に付けるためにはこの本を毎週1回読まなければならないわけではありません。
この本のエッセンス・まとめはネット上に公開されているので、1,2度本を読破したら繰り返し思い返せばよいでしょう。(wikipediaなど)

個人的感想

ビジネス書の中でもトップの知名度と売り上げを誇る本書ですが、やはりなかなか良いことが書いてましたね。
個人的には「終わりを思い描く」「win-winを考える」が気に入った習慣です。

しかし逆に、それ以外の記述が少々冗長な気がしました。
「原則に従うんだ」などのような言葉が何度も何度も登場するから、同じ言葉ばかり並んでいるようにも見えました。

また、アメリカ建国以来の200年分の「成功」に関わる文献を調査したとのことですが、本の内容からはあまりそのような根拠が見えませんでした。
コヴィー氏の個人的な体験談ばかりが載っているように見えました。
もう少しその辺りの客観性のようなものがあったほうが、個人的には面白かったと思います。

何にせよこの本はビジネス書の大定番ですから、本の効果だけでなく、内容について他人と語り合うことも出来たりしますから、読んでいて全く損は無い本です。

仕事

Posted by YU